「指名停止の通知が届いた…」「他県や国交省の仕事にも波及するのか?」
公共工事を主体とする建設会社にとって、指名停止は単なる「入札禁止」以上のダメージをもたらします。しかし、建設業法などのルールを正しく理解すれば、既存の現場を継続し、最短で信頼を回復する道筋が見えてきます。
本記事では、指名停止の実務上の影響と、経営を立て直すためのステップを解説します。
公共工事の入札参加資格における指名停止とは?建設業者が知っておくべきリスクと対策
指名停止によって生じる4つの実務的ダメージ
指名停止とは、発注者が「不適切な行為をした業者」を一定期間入札から排除する措置です。主に以下の不利益が生じます。
公的な記録による処分の波及リスク
自治体同士が直接通知し合うわけではありませんが、指定された発注機関の入札に参加できなくなるのはもちろん、ある自治体で監督処分(営業停止等)を受けると、法に基づきその情報は以下のように共有されます。
監督処分簿への登載
許可行政庁(国交省や都道府県)は、下した処分を「建設業者監督処分簿」に登載し、公衆の閲覧に供さなければなりません。
行政庁間の通知
都道府県知事が処分を行った際、他の知事や国土交通大臣にその内容を速やかに通知・報告する義務があります(建設業法28条6項)。
例えば大臣許可業者が大阪で指名停止等の処分を受けた場合、大阪府知事は国土交通大臣に報告することになります。兵庫県知事許可の建設業者が大阪で指名停止等の処分を受けた場合は、大阪府知事から兵庫県知事に通知することになります。
他機関(他の自治体)への波及
多くの自治体は、この公的な記録や他機関の指名停止状況を参照して自局の措置を決定するため、結果として全国的に悪影響が連鎖していくリスクが生じます。
公共からの受注はおそらく全て影響が出る
具体的にどのような対応となるかは自治体によってばらつきがあると考えられますが、入札に参加できないのは当然として、随意契約も除外される可能性が高いでしょう。
「指名停止になるような会社と『随意契約』をしてまで、指名停止を受けていない会社よりも優先しなければならない必要性・許容性は何か?」と問いに答えることができないからです。
企業の社会的信用の失墜
「建設業者監督処分簿」は誰でも閲覧できるため 、指名停止の背景にある違反事実(虚偽記載や事故など)は隠せません。これは金融機関の評価や、民間取引の審査においても致命的なマイナス要因となり得ます。
建設工事(公共事業を含む)建設業者 – 国土交通省 ネガティブ情報等検索サイト
経営事項審査(経審)へのマイナス影響
指名停止=経審で減点ではないのですが、その前提となる営業停止処分(指示処分・監督処分)などを受けた場合、法令遵守状況点数(W点)が最大で-30点され、経審の点数(P点)に悪影響を及ぼします。
指名停止処分明け後の受注競争力を低下させることになります。
指名停止だけでも悪影響は避けられないのに、経審のP点が下がり、入札のランクも下がるからです(ランクが下がらない範囲で収まる可能性はあります)。
【重要】停止後でも「できること」と「義務」
指名停止や監督処分を受けても、すべての事業が即座に止まるわけではありません。
現在進行中の工事は「施工継続」が可能
許可の取消しや営業停止処分を受けた場合でも、処分を受ける前に締結した請負契約に係る工事に限り、そのまま施工を完了させることができます(建設業法29条の3)。
入札の指名停止は、許可の取消や営業停止処分よりも手前の処分で、建設業の営業は引き続き行うことができます。
通知の義務
ただし、処分を受けた日から2週間以内に、その旨を注文者に通知しなければなりません 。この通知を怠ると罰則(100万円以下の罰金)の対象となります 。
第二十九条の三 第三条第三項の規定により建設業の許可がその効力を失つた場合にあつては当該許可に係る建設業者であつた者又はその一般承継人は、第二十八条第三項若しくは第五項の規定により営業の停止を命ぜられた場合又は前二条の規定により建設業の許可を取り消された場合にあつては当該処分を受けた者又はその一般承継人は、許可がその効力を失う前又は当該処分を受ける前に締結された請負契約に係る建設工事に限り施工することができる。この場合において、これらの者は、許可がその効力を失つた後又は当該処分を受けた後、二週間以内に、その旨を当該建設工事の注文者に通知しなければならない。
2 特定建設業者であつた者又はその一般承継人若しくは特定建設業者の一般承継人が前項の規定により建設工事を施工する場合においては、第十六条の規定は、適用しない。
3 国土交通大臣又は都道府県知事は、第一項の規定にかかわらず、公益上必要があると認めるときは、当該建設工事の施工の差止めを命ずることができる。
4 第一項の規定により建設工事を施工する者で建設業者であつたもの又はその一般承継人は、当該建設工事を完成する目的の範囲内においては、建設業者とみなす。
5 建設工事の注文者は、第一項の規定により通知を受けた日又は同項に規定する許可がその効力を失つたこと、若しくは処分があつたことを知つた日から三十日以内に限り、その建設工事の請負契約を解除することができる。
建設業法
民間工事への営業
公共工事の指名停止は、都道府県や市区町村などの自治体(公共発注者)との取引を制限するものです。入札への参加を停止するものですから、民間工事はこれまで通り施工可能です。指名停止になったことが原因で契約を打ち切られることはあるかもしれませんが、「工事を施工してはいけない」わけではありません。
工事を施工してはいけないのは、営業停止や許可取り消しなどの処分の場合です。
最短で復帰するための「リカバリー・3ステップ」
ただ指名停止期間が過ぎるのを待つだけでは、再発防止を重視する発注者の信頼は勝ち取れません。
STEP 1:実効性のある改善報告書の作成
入札で指名停止になると、具体的な再発防止策をまとめた「改善報告書」を提出することになります。再発防止策をまとめるのですから、原因の特定・改善策の提示は必須です。
例えば以下のような取組みはその一例です。
- 帳簿・図書の整備:建設業法第40条の3に基づき、営業所ごとに帳簿を適切に備え、保存する体制を再構築します。
- 下請取引の適正化:赤伝処理の禁止や下請代金の適正支払(原則50日以内) など、法令遵守を徹底する社内規定を整備します。
- 安全体制の整備:現場で事故が起きるのを未然に防止する体制を強化します。
- コンプライアンスの遵守:建設業法違反はもちろん、労働基準法違反、不法投棄など関連他法令の遵守にも取り組みます。
STEP 2:建設キャリアアップシステム(CCUS)等の導入
「組織が改善されたこと」を客観的に示すため、CCUSの導入や防災協定の締結など、経審で評価される取り組みを強化し、信頼を「数値化」します。
CCUSや防災協定の締結がイコール指名停止からのリカバリーではありませんが、経審の点数が上がるような取組みは、自ずとSTEP1の改善と連動することが少なくありません。
STEP 3:専門家によるコンプライアンス監査
指名再開後の審査で不利にならないよう、行政書士などの専門家による「法令遵守体制のチェック」を受け、改善結果をアピールすることが有効です。
指名停止になろう、と思っている事業者さまはいらっしゃらないかと思います。
ですが、売上や利益を重視するあまり、指名停止の原因となってしまった出来事へのリスク評価がおろそかになっていたことも間違いないのではないでしょうか?
事業者が利潤を追求するのは宿命です。利潤がなければ事業を続けられません。
ですが、「建設業許可」という特権を得て商売をしている以上、監督官庁の指導から逃れることも絶対にできませんから、要求されている水準のコンプライアンスは遵守するしかありません。
一度起きてしまったことをアクシデント(運が悪かった)として片づけてしまっては、「改善」からは程遠いといえます。
建設業を得意としている行政書士は外部から客観的な視点でチェックしています。
法令遵守がおろそかになっていると許可や入札参加資格が停止・取消になってしまい、その時のダメージが挽回不可能なのでは?という考えが強いのだと思います。
「それはできないですよ」「リスクが高くなっているのでおすすめできません」といったアドバイスは私もよくしています。
そうお伝えすると「え?そうなの!?」「セーフだと思っていた…」と言われる建設業者さまがほとんどです。事後報告ですとどうしようもありませんが…。
解決への相談窓口:行政書士ができること
指名停止は、初動の対応(事実関係の確認と、注文者への通知義務の履行)がその後の運命を分けます。そもそも指名停止にならないように備えておくのがベストです。
当事務所では、建設業法に精通した専門家として以下のサポートを行っております。
- 指名停止や許可取り消しを未然に防ぐコンサルティング
- 「改善報告書」の策定支援
- 指名再開を見据えた「経審点数リカバリー」のシミュレーション
まとめ:ピンチを「組織強化」のチャンスに変える
指名停止は厳しい処分ですが、これを機に社内の膿を出し切り、建設業法を遵守した体制を整えることで、以前よりも「発注者に信頼される企業」へと再生することは可能です。
名だたる大企業でも過去に処分を受けていることは珍しくありません。
予測できないアクシデントは不幸ながら起きてしまうことはあります。
それでも「ただ漫然と何もしていなかった」のか「十分に対策をしていたつもりだったが起きてしまった」のかには大きな違いがあります。
アクシデントは起きてしまったのだから大きな差はない、と感じられるかもしれませんが、この少しの差で指名停止や許可取消を避けることができたかもしれません。
行政はまず調査をします。事故発生→即処分とはなりません。
事故が発生しても、調査した結果、事業者の取組みは必要十分だったが、想定不可能な事情によって起きた事故であったことがわかれば情状酌量の余地は大きくなります。
「他自治体への影響は具体的にどうなるのか?」「今の現場をどう守ればいいのか?」
まずは一度、無料相談をご活用ください。御社の状況に応じた最適なリカバリープラン、予防策をあなたと一緒に考えます。








