経営事項審査は一般的には略して「経審(ケイシン)」と呼ばれます。既に毎年受審されている事業者さまにとっては当たり前のことばかりですが、建設業を始めてまだ間もない場合や、他業界から参入してきた事業者さまにとっては意外と知らないことも多いようです。
経審の審査は決算日(経審では審査基準日と呼ばれます)を基準に評価をしていくので決算日を経過してしまうと点数をアップさせる方法はないように思えます。事業年度終了後からでも点数アップを狙う方法があるのかについて解説していきます。
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投稿日時:2024年11月08日
経審を受けるにはどれくらいの費用が掛かるのでしょうか。経営事項審査申請については業界統計平均値をみるとおよそ15万円~の事務所が多いようです。ここに経審の審査業種数に応じた審査手数料がかかります。決算書、工事経歴、技術者の数などが増えると費用が上がっていきます。
決算日(審査基準日)以降にできることはあまりないが無くはない
基本的な考え方として、決算日以降にできることはないことの方が多いのは間違いありません。すでに経審を受けるために変えられる状況が無いからです。ただし、経審は様々な受け方のパターンがあるので、固まってしまった状況の中でより点数を上げられる方法がないかを検討することになります。状況が固まってしまっても点数は変動する可能性があります。
決算書の組換え、工事内容の精査、社会性の見直しが定番
決算書の組換えや工事内容の精査、社会性の加点要素の見直しなどが代表的な取組みになります。決算書の組換えといっても自社に都合よく不当な組換えをするのではありません。
建設業の会計ルール
建設業では、一般的な企業と違って税務申告用決算書類を建設業会計基準に沿って組換えて毎事業年度終了後に報告することになります。決算届や決算変更届という呼び方をされることが多いです。税務申告に使用した内容を書き換えることに不安を感じられるかと思いますが、建設業許可と税務申告では採用している(想定している)ルールが違うため、このような仕組みにならざるを得ません。もちろん、 適法な作業 ですのでご安心ください。(どう組み換えてもいいわけではありません)
工事内容の精査でP点が変わることがある
次に、工事内容の精査でもP点が変動する可能性があります。請負契約の契約書のタイトルが工事業種判断に最もわかりやすく影響するのは間違いありませんが、契約書のタイトル通りの業種にした割振りできないわけではありません。あくまでも実際に施工した内容で最終的には判断されることになります。
例えば、請負契約書のタイトルが「****新築工事」となっていたとすると、真っ先に思い浮かぶのは建築一式工事ですが、実態を見ると、「****」の新築に際して内装仕上工事をしてほしいという内容であることはそれほど珍しくありません。同じような理由で管工事や電気工事であるケースもあるでしょう。
役所の発注内容が絶対ではないので注意
これは発注者が都道府県や市区町村などの自治体が発注者であっても変わりません。つまり、公共工事の発注で指定されている業種と実際の現場で行っている業種にずれが出ることがあります。A市役所が「建築一式」で発注しているのだから必ず「建築一式」だとは言い切れないのです。
このように工事内容を精査することで業種ごとの完成工事高が変動することがありますので、P点が変わる可能性があります。
加点項目の取りこぼしがないか見直してみる
次に、よくあるケースとして挙げられるのは、知らずに取り入れたものが経審で評価(加点)されることがある、というものです。
代表的なものは法定外労災や建設機械の購入、退職金制度の導入、などです。
これらが決算日前(事業年度中)に実施されている必要はありますが、(審査基準日時点で実施されている・加入している状況)「経審のP点アップのため」という意識で取り組んでいないことも珍しくないため、見落としてしまっているケースがあります。加点要素を見落としていないか?という点は事業年度終了後でも取り組むことができます。
他にも、財務状況や完工高について、単年度の指標で受けるのか複数年で受けるのか、2年平均か3年平均か、などの受け方を選択でき、この選択の仕方によって点数が変動します。状況によって、全業種の点数が改善する場合もありますし、A業種はアップ、B業種はダウン、など業種によって結果が変わる場合もあります。