経審の点数が下がる主な原因には、財務状況の悪化や売上高の減少、自己資本比率の低下、負債の増加などが挙げられます。また、技術者の退職や資格者数の減少、工事成績評価の低下、不祥事の発生なども影響します。これらの要素が複合的に作用することで、全体の評価点が下がることがあります。特に財務指標の変動や人員体制の変化は、直接的に点数へ反映されやすい要素です。
経審の点数(P点)は、会社を総合的に評点して多角的な観点から算出されています。そのため、一朝一夕に上げることが難しいことがあります。P点の算出方法は複雑なことに加えて、評価方法が変わったりするので、なぜ上がったのかなぜ下がったのかがつかみにくいといえるかもしれません。
上がると思ったのに下がった(またはその逆)という経験はないでしょうか?経審の点数が下がってしまった場合の原因と対策について解説します。
財務状況が悪化した
ここでいう「財務状況」というのは単純に売上高のことではありません。自己資本比率が低下したり、流動比率が悪化すると、会社の収益性や健全性が下がったという判定になり、「財務状況」が悪化したことになります。例えば、大きな借入をした後だと、自己資本比率は低下しますので、たとえ売上高が現状維持か微増したくらいの水準だと「財務状況」が悪化したという判定になることはあり得ます。
財務状況の悪化は複合的な要因
「財務状況の悪化」とは、単に売上高が減少するだけでなく、会社の収益性や安全性、健全性を示す各種財務指標が低下している状態を指します。
たとえば、自己資本比率が下がったり、負債が増加したり、営業利益や経常利益が減少することも含まれます。さらに、流動比率や当座比率などの短期的な支払い能力を示す指標も悪化すると、経審の点数にマイナスの影響を与えることがあります。こうした財務のバランスが崩れると、経営の安定性が低いと判断されやすくなり、結果として経審の点数が下がる要因となります。
自己資本比率とは?
自己資本比率は、会社の総資本(負債+自己資本)のうち自己資本が占める割合を示す指標です。借入が増えると負債が増加し、総資本に対する自己資本の比率が下がるため、自己資本比率は低下します。つまり、資金を借り入れて負債が増えると、自己資本比率が悪化しやすくなります。
技術者が退職した
最も分かりやすいのは技術者が退職することで点数が下がるパターンです。社内の技術者や資格者数はシンプルに人数の多い少ないなので技術者資格者が増えれば加点、減れば減点になります。
技術者数が変わっていないのに技術点が下がった、という場合は監理技術者の講習を受け忘れていた、1人2業種まで選択できる加点対象業種の選択を誤っていた、などのケースが考えられます。
社会性で減点されている
営業停止や指示処分などを受けてしまうと、W点が最大30点減点され、P点も下がってしまいます。以前は、下限は加点されないという取り扱いだったものが、マイナス点を計上して算入するように改められていますので、W点がマイナス点、という状況があり得ます。
加点される場合の算出方法も度々調整されることがありますので、昨年と全く同じでも点数が上下することがあります。
自己資本額、完成工事高の選択ミスで減点されている
経審には急激な経営状況の変動でP点が大きく上下動してしまうことを防ぐための仕組みが設けられています。毎年のようにP点が大きく上下動してしまっては、経審を受審して入札に参加している建設業者様はもちろんのこと、発注側の役所にとっても不測の不利益をもたらしかねません。
「激変緩和措置」で点数が変わります
そういった事態を防ぐために「激変緩和措置」という仕組があります。自己資本額については、「基準決算のみ」か「2年平均」か。完成工事高については「2年平均」か「3年平均」かを選んで申請することができます。この選択によっては、点数が若干上下します。そのため、自社の今期の経審でどの業種を優先するか(どの業種の点数を一番高くしたいか)によって、自己資本と完成工事高の算出方法を選択することになります。
きちんと確認しないまま申請してしまうとこの選択だけでP点が10点変わってしまう、というようなこともありえるのでご注意ください。
シミュレーションを活用してみましょう
経審のP点はシミュレーションすることで事前に予測することができるのをご存知でしょうか。申請内容が固まればその内容を基にP点が何点になりそうか事前に予測することができます。多少の誤差が出ることもありますがかなり正確に予測することが可能です。経営事項審査を得意としている行政書士事務所であれば、通常の経営事項審査業務の中にシミュレーションを組み込んでいる事務所も珍しくありません。シミュレーション1回までは同一料金2回目以降10,000円(料金や回数は架空のものです)、といったような設定になっていることが多いかと思います。
ランクが変わりそうなときはシミュレーションしてみるのがおすすめ
シミュレーションをすることでP点が上がるのか下がるのかを高い精度で予測することができます。下がってしまった原因が分かれば効果的な対策を取りやすくなりますし、ケアレスミスによる減点(技術者の加点業種選択ミスや激変緩和の選択ミスなど)を回避することができます。財務状況の悪化などは来期以降に取り組むしかありませんが、経審の点数は参加中の入札にも大きく影響しますので、入札の格付けが変わってしまいそうな建設業者さまはシミュレーションを積極的に活用してみると良いかもしれません。