経営事項審査は一般的には略して「経審(ケイシン)」と呼ばれます。既に毎年受審されている事業者さまにとっては当たり前のことばかりですが、建設業を始めてまだ間もない場合や、他業界から参入してきた事業者さまにとっては意外と知らないことも多いようです。
経審を受けることにしたが、点数(P点)を上げるために何から取り組めばいいかわからない、という声を耳にします。経審の点数を改善するために効果が出やすい取組みについて解説していきます。
あわせて読みたい経審で点数(P点)を上げない方が良いケースがあります
投稿日時:2024年11月08日
経審は入札と密接に関連しているため、P点だけを見ていればOKというものではありません。中にはP点を上げない(上げすぎない)方が良いケースが存在します。P点を上げない方が良いケースについて解説します。点数の上がる速度と自社の成長速度がかみ合っていない場合は要注意です。
経審は社会性(W点)から取り組むのが効果が出やすい
まず最も効果が出やすい取組みは経審の中でも社会性(W点)と呼ばれるところの加点要素を拾っていくことです。
財務状況(Y点)や完成工事高(X1点)は外部の影響を受ける
財務状況のY点や完成工事高のX1点を改善していくことが王道ではあるのですが、一朝一夕で期待した効果を出せるわけではありません。景気の善し悪しや発注される工事の業種などは自社で自由に決められるわけではないからです。
社会性(W点)は外部の影響をほとんど受けない
その点、社会性のW点は自社単独の取組みであるものが多いので、すぐに点数が改善します。決算日直前に導入して、即W点に反映されるものもいくつかあります。既に導入済みなのに経審に反映させられていなかったという例も中にはありますので、まずは取りこぼしがないかをチェックしてみましょう。行政書士に依頼する場合は一度聞いてみるといいでしょう。
社会保険は必須
雇用保険、健康保険、厚生年金保険のいわゆる社会保険と呼ばれている3つは加入していないと信じられないくらいの減点となります。以前は加点要素ではあるものの減点まではされなかった時代があったのですが、許可取得にあたっても上記社会保険の加入が許可要件となったり、経審でも未加入は減点とされるようになっています。加入しないという選択肢はもはや現実的ではないものになりつつありますが、「適用除外」となるケースについては減点まではされません。
具体的に効果が出るまでのタイムラグが小さいものとしては、
- 法定外労災の加入
- 建退共の加入
- 退職一時金制度/企業年金制度の導入
- 防災協定の締結
- 建設機械の購入
などがあります。法定外労災、建退共、退職金制度の3つは会社で働く従業員の方への福利厚生になります。
法定外労災は「上乗せ労災」と呼ばれることもあり、一般的な労災保険のカバー範囲を上乗せするものです。各保険会社で取り扱いがあるので保険の担当者の方に「経審用の保険」と伝えればすぐに資料を用意してくれるでしょう。
現場で働く人たちのための仕組み「建設業退職金共済」とは
建退共は、「建設業退職金共済」の略称です。
建退共制度は、建設現場で働く方々のために「中小企業退職金共済法」という法律により、国がつくった退職金制度です。
事業主の方は、現場で働く方々の働いた日数に応じて、掛金の充当を行い、その労働者が建設業界で働くことをやめたときに、建退共から退職金を支払うという、業界全体での退職金制度です。
建設業界全体の退職金制度ですので、建退共に加入している企業であれば勤め先が変わっても建設業で働いた日数は全て通算され、退職金が支払われる仕組みです。建設業退職金共済制度
退職一時金制度、企業年金制度はそれぞれで加点されます
退職一時金制度の導入、企業年金制度の導入はそれぞれに加点される仕組みです。どちらかを導入すれば加点、ではないのでより大きく加点したい場合は両方の制度を導入することになります。
防災協定
防災協定の締結は、国や地方公共団体との締結に加え、高速道路会社や空港会社、JICAなどの特殊法人との協定締結で加点されます。ただし、これらの相手と自社単独で防災協定を締結することはあまりないかと思われます。その場合はこれらの相手先と防災協定を締結している業界団体がありますのでそこに加入するとよいでしょう。
重機を買うと加点
建設機械の所有でもW点は上昇します。ただし、レンタルの場合は加点対象とはなりません。加点対象となる建設機械に指定がありますので、購入予定の建設機械がある場合は、その機械が加点対象となる機械かどうかは確認しておく必要があります。買った後に放置していてはだめできちんと点検整備をしておく必要があります。特定自主検査記録の提出が求められることになりますのでご注意ください。